丸田先生と研究科の皆さん。

第九章

それぞれの『こつ』

この程度の経験で『こつ』を云々するのはおこがましいのですが、 私が苦労したことを忘れないように残して置きたいと思います。


1.ひび割れの原因と防止法 1).乾燥の時割れないようにするには・・ ・水を着け過ぎない。 ・厚さを均等に作る。   ・タタラ作りの場合は切り口(面、特に縁をよくなめしたり、絞めて置くこと)。 ・紐作りの場合は継ぎ目をよく押さえておくこと、また空気を中に貯めないこと。 ・糸切りをする前に底をよく絞める。   ・新聞紙の上に置く(底割れに有効)。 ・急に乾燥させない(室に入れるか、ビニール袋で調整する)。 ・割れにくい粘土を使う(赤土は割れやすい)。 (赤土や木目の細かい土程縮み易いので木目の粗い粘土や、     シャモットをと混ぜると良い・・セメントと同じ、) 2).本焼きの時に割れるのは・・   ・素焼きの時にひびがある場合が多い(湿したスポンジで拭くとよく分かる)。   ・釉薬で埋められる所と割れ目が拡大する所をよく見極めて本焼きを決める。     (釉薬を掛ける前に、筆で水を含ませて置くと接着がよい) 2. 白化粧を掛けるタイミング  1).生がけの場合(このタイミングと濃さが難しい) ・生過ぎると、崩れる(5-6分で判明、) ・乾燥し過ぎると、ひび割れする。 ・口縁は薄く掛けるか、拭き取るとよい(物に当たった時剥離し易いので) **上縁が乾燥して少し白くなった時が良い。 2).素焼きの上に塗る場合   ・ 余り濃く塗ると剥離の原因になる。     (特に口縁は、物に当たった時に剥離し易いので 薄くするか、拭き取る方がよい)   ・刷毛目を着ける時はその濃さが大切(薄過ぎると、熔けて消える--     -又、勢いを欠かない様に濃さと、筆を選ぶこと)。 3. 白化粧に灰釉薬を掛けると、艶が無くなり、マット状になる。 (白化粧は一種のxxx分を含んだ粘土であり、それと灰釉薬のxxが化学反応 してマット状になるため。)   **一見失敗の様ではあるが、又趣が有り、おもしろい ** 4. 徳利の作り方 ・一番のこつは筒を高く引き揚げることである。      (後は、思いの形に膨らませばよい) ・口縁の為、上の方の土を厚く残して置く様に。   ・口を絞る時は時間を掛けて慎重に狭めていく事。 ・口を絞る時は途中で少し絞っておくとよい。   ・一本挽きの方が底の厚さや、ぶれを少なくできるので作り易い。 5. 黄瀬戸の色の出し方 ・本来は土(美濃、瀬戸)とそれに合った釉薬を使うのだが、私は信楽の     白土を使って、灰釉薬を薄く(素焼きをさっと水に着けて)かけています。     (但し、粘土の鉄分や、釉薬の濃さ加減で思うような黄色が出ない) 6. 長皿の乾燥時に反らさないには   ・乾燥にゆっくり時間をかける(ビニールを掛ける等)。   ・下に枕(新聞紙を丸めたもの等)を敷く。   ・重石を置く(新聞紙を折った上に板を置き、その上から)。 7. 流れ易い釉薬を使う時の工夫
・・・(共同の窯では釉薬に合わせて温度を調節できないので)  ・余り厚く掛けない。   ・腰に釉薬の泊まりを作る。   ・高台部分をよく拭いて置く   ・飴釉、灰釉は流れ易い   ・二度焼きの場合は特に流れる(釉薬の浸透がないので・・) 8. 登り窯で火色をだすには   ・鉄分を含んだ赤土を混ぜる(30%程度)。   ・窯の位置(火がよく通る所に置く)。   ・素焼きの時、塩水に浸した藁を巻く(火襷の手法)。 9. タタラの縁が割れやすい    (切り口が粗くなっているので、乾燥の時ひび割れし易い)。 ・表面、縁をよくならすして置く(竹べら、なめし革等で・・)    ・素焼きの後、スポンジで水拭きすると薄くひび割れ線が出る    場合は、本焼きの時に傷口が広がる場合が多い。(物によっては    埋めることも可能 10.急須の口と角度   ・常滑の「山田常山」さんの急須はさすがに「天下一品」で形ばかりでないと聞く。   ・物理的には、水が集まって勢いよく飛び出る形が良い。   ・分水嶺がシャープになる角度と形である。 11.汁が垂れない注ぎ口の形   ・急須に同じ・・ 12.大物と亀板   ・粘土による接着が一般的である   ・ボルト止め、C cripで挟む方法が簡単で強度がある。    (大物を挽く時は土台がしっかりしているものが好ましい) 13.しつたと削り   ・大量に削る場合は便利であるが、少ない個数の時は、あり合わせの物、植木鉢、洗面器、 を利用するとよい。   ・口縁を少し乾燥させた後、粘土の上に直に伏せて、三点固めで十分である。 14.高台削りのタイミング   ・その日の湿度によって異なる     通常5-6時間で上口の縁が白っぽくなった時が削りやすい    *私は小者の場合はドライヤーで乾燥(特に、上縁を乾燥)して     作って、1--2時間で削ることが多い。(ざっくりとした土味をだすため)   ・時間がなければ、ビニール袋を掛けて乾燥を調整する   ・ぐい呑み等のざつくりした削りをだしたいとき、手彫りでカンナを使うこ  とも多い。 15.粗い土(シャモット入り等)の口縁、高台底をなめらかにするには    なめし皮より、竹べらを当てた方がうまく石が沈んでくれる(なめし皮の場合は  筋が付く) 16.皿の作り方 ・初めから高台を大きく取り、後で削る ・出来るだけ伸ばしや、こて当ての回数を少なくし、素早く引き揚げる。 ・ロクロより外す時に変形し易いので亀板を使う方がよい。 17.釉薬の剥げを少なくするには   ・素焼きのゴミをよく取る   ・スポンジで少し湿して置く(特に櫛目など)   ・余り厚く釉薬を掛けない(垂れ落ちる) 18.高台近くの釉薬の段差を無くすには   ・ 軽く水に湿す(釉薬が薄く掛かる) ---(丸田先生より) 19.「シャモット」を入れた場合の釉薬、焼成   ・石の味をだすために、出来れば、焼き締めが良い(登りで火色を付けたい)   ・釉薬については・・研究中・・ 20.土と釉薬    ・・『一焼き 二土 三細工』と言われ、焼きが 一番難しい・・ 電気窯では焼きはコンピユーターが決めてくれるし、細工は経験により上達するが、   土は普遍であり、その意味で土の選定は大事である。 21.引き揚げ時にぶれない、切れない為には   ・粘土をよく揉む   ・中に空気を入れない   ・粘土の堅さが大切(柔らかい時は、粘土粉、シャモットを入れる) 22.粘土は寝かしたもの、再生物のほうが粘りがある。   ・粘土を一定期間湿った所に貯蔵して置くと粘りが出て成形し易い粘土    となる。このことを「ネカス(寝かす)」と言っている。   ・粘土中の有機物を分解するバクテリアの作用によるものと観られている。 23.二重掛けのタイミング。   ・乾き過ぎると縮れたり、剥離することがある。   ・手で持てる様になればすぐ二重掛けをするのがよい。 ・徳利に二重掛けをする時内側が剥離する。 薄い首の所をドライヤーで乾かす時に内側が乾燥し過ぎて二度掛け の所に厚く掛り剥離する様だ。
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