第六章
基礎釉薬について
.基礎釉薬の配合表と実験結果.
.粘土(すいひ白土)
.(赤印=②は長石=80%,ナラ灰=20%,藁灰=0%の場所を示します)
.(焼成温度=摂氏1230度)
・・(上図)基礎釉薬(灰立)の配合と調子の概要・・
A:半光沢で白濁の部分、B:光沢透明の部分
C:熔けて流動性があり、ナラ灰に含有している金属の発色が表れる。
D:乳濁の部分、E:半熔/不熔解の部分。
釉薬(うわぐすり)とは、釉薬の原料とは、
うわぐすりは土の発展したもので、出来上がった作品の素地に水が浸透しないように、また、装飾
の為に、陶磁器の表面を覆っているガラス質のもので、釉薬とも言われています。
うわぐすりの発見は、土器を焼いていた過程で燃料として使っていた雑木の灰が土器の原料の中に
含まれている長石や珪石などの成分と化学反応して土器の表面を覆った、いわゆる自然降灰釉を発
見したのが始まりです。
その後、鉱物学の発達と先人の努力により、構成、生成原理が科学的に解明されてきましたたが、
原理的には、粘土で作った作品が熔けて形が崩れない温度域で熔けはじめるうわぐすりを作って
作品に塗付し、焼成時に作品の素地である長石等と融合させばよいのである。
それで、釉薬原料は粘土と同じく珪酸、酸化アルミニウム、アルカリ(塩基)成分を含有する土、石
植物の灰が使用されるのです。
ただ、釉薬が粘土と違う点は、粘土より低い温度で熔融しガラス状になることです。
つまり、素地となる粘土はある一定の焼成温度以上の耐火度が必要ですが、釉薬は焼成温度で熔け
なければなりません。
そこで、うわぐすりは、ある一定の温度を基点として、熔けない石と、熔ける石と、形を保つため
の鉱物がほどよくバランスがとれる配合をつくることにあります。
それでは、偶然に発見した自然降灰釉を作っている灰の成分はどうなっているのだろうか、
灰の中には、雑木を燃やした時に残る石灰石(Ca)の多いものと、藁、竹などをもやした後にのこる
珪素分(Si)の多い灰がある。実は、自然降灰釉は燃料カスとして残ったこれらの灰が交じり合って
作品に降りかかり素地の長石や、珪石の成分と反応して表面を覆ったものである。
これらの灰を利用して作ったのがいわゆる灰釉といわれる釉薬である。
うわぐすりの原料はNa,K,Si,Caを含んだ、石と土、石と灰などを組み合わせて作っています。
これらは、また、無色透明に近く、添加剤等を加えて作るその他の釉薬の基礎になるので、一般に
基礎釉(透明釉)といわれています。
・基礎釉薬の構成要素・
熔ける石.................:ナトリウム、カリウムを含んだ(石灰石、長石、ナラ灰、骨灰・)
熔け始める石(骨材).......:酸化アルミニウムを含んだ(長石、陶石・・)
熔けない石...............:珪酸を多量に含んだ石(石英、珪石、ワラ灰、モミ灰・・等)
なお、透明釉にも配合度合いで質的に、三種類(透明、乳濁、マット)に大別される。
『休憩時間』釉薬の種類と分類について
・釉薬の分類(いろいろありすぎるが、・・)
1).焼成温度によって-----低火度釉(1000度前後で焼成する)、高火度釉(1200-1300度で焼成)
2).釉薬の原料によって---鉛釉、タルク釉、バリウム釉、石灰釉、長石釉、灰釉
3).釉の外観によつて-----透明釉、不透明釉、艶消し釉(マット)釉、結晶釉、色釉
4).色釉の別名-----------柿釉、天目釉、ルリ釉、青磁釉、辰砂釉・・
5).基礎釉---------------添加剤を入れる前の透明釉
(基礎釉も透明、乳濁、マットの三種類に大別される)
基礎釉薬の制作と焼成実験
(於ける陶芸教室研究科)
学習の目的
1).灰を主な原料として(灰立で)、配合度合いの違う基礎釉薬を作り、同じ素地のテスト
ピース(生徒の作品)に施釉し、その焼成後の質を観察する。
2).また、四種類の素地でそれぞれの違いを確認する。
上記添付写真は、配合度合いを簡単に表らわした三角チャートで
あり、それぞれの頂点
から底辺に9等分してあり、底辺をゼロとし、頂点を100とする。
例えば、配合の度合いとして、#2のポイントは、長石=80% 、ナラ灰 =20% 、ワラ灰=0% の割合
を示している。また、長石の多いのは(#1,2,3)、ナラ灰の多いのは(#22,29,35)、ワラ灰の多い
のは(#28,34,39)の領域である。
一般的な釉薬の調子を場所的に示すと上図(左)のような概要になる。
・・基礎釉薬と土の違いによる焼成結果・・
(同じ釉薬でも、土によって焼成結果に大きな違いがある。)
今回の焼成は四種類の土に基礎釉薬の配合を40種類作り1230゜Cで焼成している。
(テストピースとしては160個出来たことにる)
1.白土(すいひ)の場合(結果例:---上図右)
・全体的に長石も程良く熔け、生地と反応して萩っぽくなっている。・・
・長石が多く、ワラ灰の方がナラ灰より多い部分、(#1,#3,#6,#10)は釉薬は熔けているが、
貫入が生じている。
・・貫入は生地と釉薬の収縮率の違いで二種類あり
1)生地の方が、収縮率が大きい場合----(亀甲模様の亀甲貫入)
2)生地の方が、収縮率が小さい場合----( )
・釉薬の中のアルカリ分が水に溶けてしみ込んだ部分(釉薬の切れた境界部分)は緋色(火)が
出ている。
余談:備前の緋色(ひだすき)は塩田の塩を詰めた俵を燃料の一部に使用した時に俵に含ん
でいたソーダー(Na)が付着した為に生じた現象である。(味噌、醤油でも可)
2.原土(すいひはこれをすいひした土である)
・釉薬は#7,#12,#18,#26,#33,#38を境界線として使用出来る。
・上の境界よりナラ灰が多くなる範囲では、よく熔けるが、石灰質の灰汁が浮き出て黒っぽく
なっている。
・ナラ灰が多くなると熔け易く流れてくる。(#7,#11,#12,17,)
・黄瀬戸は#16,#17,#33近辺で流れない様に薄く掛けるとよい。
・いらぼは#23,#29,#35近辺を利用した釉薬と焼成法である。>
3.赤土
・目が細かく、吸水性が少ない(磁器土はより細かく、吸水性が少なく、防水性が高い)
・鉄分が多く、融点も低くなり、今回も他の土よりよく熔けている。
・
4.磁器土
・ガラスになりかかっている(磁器土は が多い土である)
・磁器は陶器より高温で焼くのか・・・??
・吸水性が少ないので、釉薬が流れ易い
・・施釉の厚さは、いろいろの条件により異なる。
1).生地による(吸水性、表面の違い)
2).釉薬の原料
3).土石立と灰立の違いにもよる
(土石はハガキ3枚程度)
(灰はハガキ5枚程度)-----2枚分は灼熱原料として焼成時に飛沫する。
・・・灰材の方がコストが高いが、出来上がるとフワットした感じで本物の味がする。
5.基礎釉薬と発色
・実際の原料には少しの金属成分を含んでおり、多少発色する、特に熔けやすい石灰質の部分
では 浮遊してくるため灰汁の様な黒色が浮き出て来ている。
『休憩時間』----化学の時間--モルとは何ぞや
研究科の時に天秤秤で藁灰や、長石、楢灰の量をはかったが、それが、分子数を表すモルとどんな
関係があるのか・・・はるか昔、高校の化学の時間に聞いた様な気がするモルについて息子の教科
書を引き出して少し勉強してみたいと思っています。
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