...写真:よみうり文化センター千里陶芸工房
第一章
やきものの原料について
やきものの原料は粘土と釉薬であり、いずれも地球のおくりものである。・・
やきものの原料と特性
粘土の特性
一般に、粘土は風化、堆積を繰り返して出来たものが多く、鉄を中心とした着色成分が
混入しますので、これらを使った多くの焼き物は茶系の色になります。
しかし、鉄分が非常に少ない粘土が産出することがまれにあり、その一つが磁器の産地で
ある有田です。
粘土は600度位に加熱すると、分解されて結晶水を放出し、粘土の性質は失われ、粘土
に水を加えても、元の粘土には戻りません。
粘土の分解温度以上まで加熱することを『素焼き』といい、900度位間での温度で焼成
したやきものを『土器』とよんでいます。
長石の特性
長石は、粘土や、珪石と違いカリウムやナトリウムを含むので、高温になると素地土中
の周りの成分と反応し、熔けてガラスを生成します、さらに高温にすると磁器化し、透光
性のある美しいやきものになります。
長石中のカリウムとナトリウムの量や割合は産出する地方によって異なるので、熔け方が
異なる。
珪石の特性
珪石は、長石と同じく非可塑性原料で粒子の形がごつごつしており、やきものの乾燥時
には縮みません。その性質を利用して、粘土の収縮によるひび割れを調節し、高温に於い
ては長石と熔けてガラスを作り、熔け残った珪石は骨材としてやきものを強くします。
珪石は、地球上で土を握れば必ず入っている程広く存在しており、主成分はシリカでど
のやきものにも必ずはいっており、一般に、素地や釉薬中で70%を占めています---やきも
のの主成分です。
陶石の特性
長石と粘土と珪石が適度に混ざった鉄分の少ない鉱物。
天草陶石は、シリカ分が多く、鉄分の少ない岩石が、地下の高温高圧下において水蒸気に
よる水熱作用を受け、鉱物出来たもの。つまり長石と粘土を兼ね備えたセリサイトと珪石
が主成分で、しかも鉄分が極めて少ないため、純白の有田焼きに取っては不可欠である。
アルカリ、アルカリ土類原料
素地や釉を溶かす役割の原料をアルカリ、もしくは、アルカリ土類原料と呼びます。
・アルカリ---長石(ナトリウム、カリウム),炭酸リチウム等
・アルカリ土類原料---マグネサイト(マグネシウム),タルク(マグネシウム)、
石灰石(カルシウム)、酸ストロンチウム、炭酸バリウム等
使用目的
・ナトリウム、カリウム----釉の基本、(素地土との反応)
・リチウム--------低火度釉のトルコ青釉
・マグネシウム-----結晶釉、貫入防止、
・カルシウム-------釉の基本、(素地土との反応)
・ストロンチウム----釉が熔けやすくなる
灰
土の中から芽が出て育つた草木は、主に炭素、水素、酸素から成っていますが、地中か
ら得た少量の珪素、アルミニウム、カルシウム、カリウム、鉄なども含んでいます。
草木を燃やすとそれらが灰となって残ります。一般に炭素分も残りますので黒っぽい色に
なります。そして、その組成は釉を作るのに都合のよい割合になっており、長石(骨材)を
加えるだけで透明釉、乳濁釉になります。
灰そのものは釉薬ではありませんが、器の素地土の長石と反応して、いわゆる、灰釉、
自然釉となります。
灰の成分は、草木の種類によって多少異なりますが、どの灰も必ず灰釉の原料として使
用出来ます。
・藁灰、籾灰は80%前後のシリカ分を含む--------シリカ原料
・樹木灰(ナラ)はカルシウム(約35%)を含む------カルシウム(石灰石)原料
添加剤
釉への添加剤には、着色剤と乳濁剤があります。
・着色剤(鉄、銅、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル--遷移金属の酸化物)
・乳濁剤(ジルコン、酸化スズ、骨灰、酸化チタン等)
呉須
描かれる絵の種類、文様、時代、地方、により多種類があるが、いずれも、主成分は
酸化コバルトで基調は青色である。
・アルミナを加えると---明るい青色
・鉄、クロウム、マンガンを加えると---渋い色
素地土
素地土は 粘土、長石、珪石を調合して作る。
・粘土が多く、粒子が粗いと----陶器素地
・長石が多く、粒子が細かいと--磁器素地
もともと、やきものの土はその地方独特の方法で採掘、調整され
地方独自のものが作られてきた。(我々の陶芸教室と異なる)
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